ヘタレ脱却に向け,ツールド八ヶ岳へ挑戦(レース編)

マトリックスの安原監督のイケイケトークもあり,緊張も解れた。

ジャパンカップ前夜祭の時のマトリックスチームの映像が思い出される。

アナウンスが終わると,会場は静まり返り,聞いたことのあるBGMだけが会場に響いていた。なんだっけなこの曲。

そしてスタートまで3分前のアナウンスで我に返る。

2分前・・・1分前・・・。

バーン。

9時に男子チャンピオンクラスがスタートした。

その後2分おきに各クラススタートしていく。男子Cクラスがスタートすると,いよいよ男子Dクラス(35歳~40歳)のスタートだ。

スタート地点の前方に移動し終わってから,自転車に跨り,右足のクリートをビンディングに嵌める。

パチンッ!いつ聞いても,クリートを嵌める時の音はいい音だ。

スタートは後方に位置していたので,できるだけ抜かし易い右端を陣取って,スタートを待つ。

この場に立つ前は正直もっと,ブルってしまうかと思っていたけれど,意外と落ち着いている。


バーン!いよいよスタート。

とりあえず,心配していた左足のクリートもちゃんと嵌った。

スタートのゲートを通過した時にガーミンのLAPボタンを押し計測を開始。

もう戻れない。ここから,遥か25km先,1300m上った麦草峠(標高2127m)までひたすら上るだけ。普段の練習でこんなに長い距離を上った事がないのでまったく想像もつかない。

下から見える雪を被った山頂は,はるか先に見えるのだ。

このコースの距離と標高差を見るとMt.富士ヒルクライムよりも少し長く,標高差も少し高いようなコース。いつかは出場たいMt.富士よりも条件は厳しいから予行演習にもなる。

はたして自分はちゃんと走りきれるのだろうか?

今回のテーマは自分の限界を試すこと,俺チャレだ!

スタート直後は,前方の早いペースに乗っかろうと,できるだけ抜いていく。

そして,1kmも走らないうちに,良いペースの集団を発見。ペース的には,20~23km/hと良いペース。とりあえず,この集団と一緒に走ろう。

しばらくすると,先にスタートしたCクラスを抜き出した。

沿道には地元の方々が「がんばれー」と応援してくれている。ただ,手を振る余裕なんてない。

10分ほど走ったころだろうか?上りで早くもインナーローを使おうと,リアを変則した瞬間にガラゴロガラゴロと異音が発生し,そのままクランクは空回り。チェーンが落ちた。

なに,こんな状況で,チェーン落ちかよ!

コース脇に寄ってリアのチェーンを嵌めるが,いきなりタイムロス。さっき抜いた人達に,どんどん抜かされる。

1分ほどかかって再スタート。この時点で心が折れそうになるが,まだまだコースは長い。

そして前方の集団まで追いつこうと少し飛ばした後,サイコンをみたら心拍計しか動いてない。スピードも,ラップも,ケイデンスも無反応。

どうした,ガーミン。こんな時に,お前は何をしているんだ?

どうする?心拍計が生きているのが唯一の救いだが,速度と勾配が確認できないのは痛い。

しかし止まって調整する余裕はない。しょうがない,どうせ最後はサイコン見る余裕も無いだろうからこのまま突っ走ろう。

流れに乗ったまま10分ほど走った頃落ち着きだしたので,再度ガーミンを弄りだす。コース画面にした際にGPSがどうのこうの表示された後,現在地を捕獲したらしく,LAPの画面に戻すと全て生き返っていた。

助かったぜ。しかし,この空白区間のタイム計測がされていないから,LAPタイムが分からなくなってしまった。

家を出る時,腕時計でもLAPタイムを計測しておこうかな?なんて思ったけど,軽量化のため却下した自分をこの時悔む。

その後は,淡々と周りを抜きながらイーブンペースをキープ。この頃は意外と良いペースで走っていた。

後ろから抜かされることも少なく,前の人を抜くように走る。

勾配の緩くなった区間では,早い集団の後ろに付いて,ペースを上げ,勾配が急になったら,心拍数の上がらない程度に抑えながらも前を抜くの繰り返し。

しかし,快調なのも長くは続かない。上り始めて10kmほどした頃になって,脚に乳酸が溜まりだしてきたようだ。

勾配が3%ぐらいに緩くなった所で,前の集団に追いつこうと脚を回しても,まったく差が詰まらず追いつけない。

先ほどまでの勢いなんて何処かへ行ってしまった。ボディーブローを食らった事なんてないけど,たぶんこれがそうなんだろう。

遠くからアナウンスが聞こえてくる。なんだか人もいるようだ。もうゴールなのか?いやいやまだ半分しか上ってない。

近づいてくるとスキー場があるのが分かる。そうだ,これはハーフコースのゴールだ。

コース脇にはギャラリーも居て「がんばれー」と声をかけてくれるが,もうそれに答える余裕なんて無い。

正直,ここでゴールしてもやり遂げた感がある。なんでハーフにしなかったんだ?とエントリー時の勢いを後悔するが,今回のテーマは俺チャレ。まだまだ自分の限界には達していない。

そして,ここを過ぎると冬期閉鎖区間のため,沿道の人も居なくなる。あるのは,ただ目の前の坂だけ。

しかし暑い。周りは雪なのに暑い。ジャージのファスナーを下ろして冷気を入れて体を冷やさないとオーバーヒートになってしまう。

春に愛用しているユニクログローブの中も暑さでウェットになってきた。一度グローブを外すが,大会の規定にグローブ装着と書いてあったのを思い出し,再度嵌めなおす。暑いぜ。

額からは汗が滴り落ちる。落ちた汗がサングラスのレンズの内側に垂れてきた。視界が悪い。それほどスピードも出ない,いやスピードを出せない今,サングラスは必要ない。勾配の緩くなったところで,サングラスを外し頭の後ろにセットした。

この頃になると,前を抜かすなんて事はまったく考えられなくなった。

そして,40歳~50歳クラスのスーパー中年にどんどん抜かされる。

一体,あの人達のポテンシャルはどれだけなんだ?そして彼らより若い私のポテンシャルはどれだけなんだ・・・。

大会後にエントリーの一覧をみたけど,40歳~50歳クラスは一番参加人数が多く,360人もエントリーしているらしい。恐るべし40代。

何事においても,まだまだこの人達には敵わないんだ。

さらに,MTBで走り抜ける集団がいた。ぶっといタイヤでロードバイクを蹴散らすように行ってしまった。

今,私は幻を見たのか?いや,たぶんあのMTBには電動アシストが付いていたんだ。そうとしか思えない。

この頃になると,周りの人たちも固定されてきた。自分も疲れているけど,周りも疲れている。たぶん抜かしたくても抜かす力は皆ないんだろう。

前の人を抜かしても,その後その人に抜き返されるの繰り返し。唯一の例外は,スーパー中年の特急列車のみ。

初心者ヒルクライマーにおいて,敵は他の参加者ではなく,目の前の坂なのを思い知らされる。

おまけにリアの変速が25Tにする時が微妙になってきた。一度25Tに下げた時に,前半のチェーン落ちと同じ異音のガラゴロが鳴ったため,直ぐにシフトアップして,難を逃れた。

どうやら軽めにレバーを叩かないと,チェーンが落ちる可能性大のようだ。こんな時に,変速にも神経使わないといけないとは,普段の整備がアマちゃんだった事を思い知る。

しかし,いつまで続くんだこの坂は?サイコンの距離は前半の失態であてにならないし,ガーミンのコース表示では拡大表示されていてゴールが見えない。

もう,いい加減いいだろう?と思った時,残り5kmの表示が。

そして,ここからが地獄のようだった。

荒川で5km走るのなんて大した事はない。たとえ向かい風だろうが,ちょっと頑張ればいいだけだ。

しかし,この地獄の20kmを上った後の5kmは,果てしなく遠い。しかもまだまだ上らなければいけないんだ。

この頃になると固定されていたメンバーからも遅れだす。

当然のように,ギアは25Tに固定しているけど,もう脚が回らないのだ。

出来る事は,ただペダルを踏むだけ。何も考えずただ上るだけ。

100m走るのも長い。勾配は6%程度なのに,速度は12km/h程度しか出ない。前半に抜かした人達にもどんどん抜かされていく。

あ,あのジャージには見覚えが・・・しかし,そのジャージの方々は私を抜いて遠ざかっていく。

恥ずかしながら,残り5kmからの失速が半端ではない。

初心者ヒルクライマーのセオリー,前半ゆっくりで後半までペースを落とさないってのは本当だったんだ。私はこんな長い距離を上った事がなかったから,明らかに前半飛ばし過ぎてしまったのだ。

今は履いているホイールは約1.5kgと比較的軽い部類に入るけど,この状況で軽いなんて事はまったく感じられない。まるで鉄下駄,いや鉛の玉を引きずっているようだ。

この状況で0.1kgホイールが軽かったとしても,同じように感じただろう。結局はエンジンが鍛えられていないとどうしようもない事を思い知る。

ボトルを見ると,この状況でも2/3以上残っていた。こいつの中身を捨ててしまえば300gぐらい軽くなるんじゃないか?

そんなことも頭を過ぎったが,前日に210円を出して買った,グリコのクエン酸&BCAAが入っている。捨てるのはもったいない。

こんな状況にもなって,210円を捨てる決断もできないから,家族の中での地位も低いんだ。

その後,対向車線からチャンピオンクラスの人達が下りてきた。

こんなに早く仕事を終わらせて下山するなんてとんでもない人達だ!そして,この苦しみから解放されている人達を見ると羨ましいし,いっその事この下り列車に便乗させてもらいたいが,まだまだ自分の仕事は終わっていない。

残り2km程だろうか?若干の下り区間に差し掛かるが,下りでも脚を回す気力が無い。でもここで速度を上げて,上りを惰性で突っ込まないと楽ができない。ここは最後の力を振り絞って加速する。

この頃にはガーミンのコース表示は見ないことにした。ゴールが表示されていないコースを見ると,気持ちが萎えてくる。いっそこのまま淡々と上っていつの間にかゴールが見えたほうが嬉しいだろう。

やっと,勾配が緩くなりだした。もう山頂に近いのだろう。ゴールは近い。頑張れ俺!

そして,念願のゴールが見えた。心から嬉しい。あそこを過ぎたら,この苦しみから解放されるんだ。

本当の最後の力を振り絞ってダンシング。

ゴールを通過した時のピッて鳴ったセンサーの音で,やっとこの苦痛から開放された。

やっと終わった。これでやっと。

ゴールしたら,やはり嬉しかった。スタートする時に見た,遥か彼方の山頂に今たどり着いたんだ。

疲れているんだけれど嬉しい,なんだか不思議な達成感にこの瞬間満たされていた。


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